夏のかんかん照りで部屋の中がすごく暑い!
冬の昼間に部屋が真っ暗で冷えちゃう…
そう、快適な住宅を実現するためには、太陽の力を上手く使うのが重要です。
太陽の熱を効率よく活用するのは「パッシブデザイン」の考え方からも、とても重要です。
この記事では、太陽光の熱による住宅に与える効果について解説します。
- 夏と冬の日射コントロール方法の基本
- 平均日射熱取得率の計算方法
- 冷房期の平均日射熱取得率の省エネ基準
省エネで快適な室内環境には日射熱コントロールの基本
太陽の熱は、晴れてさえいれば夏でも冬でもいくらでも降り注いできます。だからみんな太陽光発電といったものでエネルギーに変換しているわけです。
でも、太陽光発電がなくてもそのエネルギーをコントロールすることで住まいに役立てることができます。
夏と冬でもその取り扱いが違いますので、詳しく解説していきます。
日射熱の種類とその効果的な取り入れ方
建物に入ってくる日射熱には、以下のものがあります。
- 屋根・天井から入ってくる日射熱
- 外壁から入ってくる日射熱
- 窓から入ってくる日射熱
屋根や天井、外壁は断熱材で覆われているため、日射が直接家の中に通すことはありません。
一方で直接日射が入ってくる窓の影響はとても大きいです。
夏と冬で異なる日射熱の扱い方とは?
日射熱の取り扱い方は夏と冬で大きく変わります。
夏は暑くて冬は寒い。当たり前のようですが、ここがポイントです。
夏はただでさえ暑いので、日射熱は家の中に極力入れたくない。だから、日射を遮蔽します。ひさしで影を作ったり、すだれやカーテンなどで熱が直接入ってくるのを防ぎますよね?
冬は寒いので、できるだけ日射を家の中に入れて、少しでも暖かくします。太陽のは低くなりますので、夏は影になっていたけど冬なら日は入ってきます。
これが日射熱の取り扱い方の基本です。パッシブデザインの考え方はこれに基づきます。
日射熱コントロールの省エネ効果
夏は日射遮蔽でできるだけ涼しく保つ。冬は日射熱取得でなるべく暖かく保つ。
こうすることで、冷房・暖房の負荷を下げることができます。
また冬には、太陽の日射熱を蓄熱する構造とすれば夜間の暖房の補助にも使うことができます。
ただし、これらの効果を最大限利用しようと思ったら、高断熱住宅に設計しておくことが大事です。高気密・高断熱は、住宅の熱のコントロールには必須要素です。
日射熱取得率の計算方法
日射熱がどれくらい利用できるかが、計算によって求めることができます。ただ、正確に計算するのはかなり大変です。ここではどんな計算方法で求めるか、簡易的に見ていきましょう。
平均日射熱取得率(ηA)の計算方法は?
平均日射熱取得率とは、住宅や建物全体の外皮(屋根・壁・床・開口部などの建物の表面のこと)の合計面積に対する日射取得量の割合を表す数値です。
天井、壁、床、窓などの外皮から入る日射熱を合計し、その値を外皮の合計面積で割ったものが平均日射熱取得率となります。
この数値が大きいほど、建物内部への日射熱の侵入量が多くなります。
「平均日射熱取得率(ηA)」の計算式は以下の通りです。
平均日射熱取得率(ηA)=建物が取得する日射量の合計 / 外皮面積
ηAを計算するためには、「建物が所得する日射量の合計」を計算する必要があります。
屋根、壁、ドアの日射熱取得量は、
UA値(外皮熱貫流率) × 0.034 × 面積 × 方位係数
窓の日射熱取得量は、以下の式で計算できます。
ηd × (fC or fH) × 面積 × 方位係数
この2種類の合計から外皮面積を割ると、平均日射熱取得率(ηA)となります。
方位係数
地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
屋根・上面 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 |
北 | 0.329 | 0.341 | 0.335 | 0.322 | 0.373 | 0.341 | 0.307 | 0.325 |
北東 | 0.43 | 0.412 | 0.39 | 0.426 | 0.437 | 0.431 | 0.415 | 0.414 |
東 | 0.545 | 0.503 | 0.468 | 0.518 | 0.5 | 0.512 | 0.509 | 0.515 |
南東 | 0.56 | 0.527 | 0.487 | 0.508 | 0.5 | 0.498 | 0.49 | 0.528 |
南 | 0.502 | 0.507 | 0.476 | 0.437 | 0.472 | 0.434 | 0.412 | 0.48 |
南西 | 0.526 | 0.548 | 0.55 | 0.481 | 0.52 | 0.491 | 0.479 | 0.517 |
西 | 0.508 | 0.529 | 0.553 | 0.481 | 0.518 | 0.504 | 0.495 | 0.505 |
北西 | 0.411 | 0.428 | 0.447 | 0.401 | 0.442 | 0.427 | 0.406 | 0.411 |
下面 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ηd (窓枠、ガラス、遮蔽物で決まる日射熱取得率)
ガラスの種類 | ガラスのみ | 和障子 | 外付けブラインド |
---|---|---|---|
単板ガラス | 0.63 | 0.27 | 0.14 |
複層ガラス | 0.57 | 0.27 | 0.12 |
Low-E複層ガラス日射取得型 | 0.46 | 0.27 | 0.11 |
取得日射量補正係数(fC, fH)
取得日射量補正係数は冷房期(fC)と暖房期(fH)に分けられ、以下の3種類があります。
- 固定法(fC=0.93, fH=0.51)
- 簡略計算法
- 日除け効果係数と斜入射特性を用いる方法
この計算から、さらに冷房機(夏)と暖房機(冬)に分けて考えていきます。
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)
冷房期の平均日射熱取得率とは、単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮等面積の合計で除した値です。
この値が小さいほど住宅内に入る日射による熱量が少なく、冷房負荷を下げることができます。
冷房期の平均日射熱取得率は、「ηAC値」とも呼ばれます。
暖房期の平均日射熱取得率(ηAH)
暖房期の平均日射熱取得率は、単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を暖房期間で平均し、外皮等面積の合計で除した値です。
この値が大きければ大きいほど、冬場の暖房費を抑えることができ省エネになります。
暖房期の平均日射熱取得率は、「ηAH値」とも呼ばれます。
省エネ基準に適合するための平均日射熱取得率の目標値は?
省エネ基準法における平均日射熱取得率は、冷房期にのみ設定されています。
要は、夏の日射を遮蔽して、家が暑くなるのを抑えましょうという目安です。
地域区分別に設定されていますが、地域区分1~4(北陸・東北以北)では設定されていません。
令和2年(2020年)省エネ基準値
地域区分 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|
代表的な地域 | 北関東 | 南関東以南 | 九州南部 | 沖縄 |
ηAC値 | 3 | 2.8 | 2.7 | 6.7 |
新築省エネ基準では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)といった先進的な建築設計による省エネ性能を目指しています。
これらの基準では、「外皮平均熱貫流率」や「冷房期の平均日射熱取得率」などが重要な評価項目となっています
快適な室内環境を実現するには日射熱コントロールが基本戦略
日射熱を適切に利用することにより、夏は涼しく、冬は暖かい部屋を実現する助けになります。
特に重要なのは、窓の使い方。
断熱性能を保ちつつ、日射取得型と日射遮蔽型の窓ガラスを適切に配置することによって、日射取得・遮蔽を効率よく使い分けることができます。
これから家を建てる人しか対策できないの?
そういうわけではありません。
日射の遮蔽はなにも窓ガラスそのものでなく、すだれやカーテン、ブラインドでも簡単にできます。
特に夏場はダイレクトに日射が入ってくるとすごく暑いので、日射を遮蔽する工夫をして快適な生活ができるようにしましょう。