床下の断熱方法には大きく二つあります。
- 床断熱
- 基礎断熱
どっちも部屋の外だし、変わらないんじゃないの?
全然違います。
高気密・高断熱の住宅を作るためには、「基礎断熱」が必須です。
日本従来の住宅ではこれまでは「床断熱」が一般的でした。しかし、近年の省エネ化、ZEH化に着目されてからは基礎断熱工法が注目されてきました。
この記事では、普通の人は気にもしなかった床下の断熱方法について紹介・解説します。
- 「基礎断熱」と「床断熱」の違い
- 「基礎断熱」のメリット
- 「基礎断熱」のデメリット
- 基礎断熱のメリットを最大化する「床下暖房」
基礎断熱とは高気密化の必須工法 – 床断熱との違い
基礎断熱の最大の特徴はその気密性の高さです。
「基礎断熱」と「床断熱」の構造上の違い
基礎断熱材と床断熱材の主な構造上の違いは、“断熱材がどこに配置されるか” です。
住まいの基礎は普通、鉄筋とコンクリートでできています。「基礎断熱」は建物の基礎コンクリートに沿って配置される一方で、「床断熱」はフロア材の下に敷設されます。
基礎断熱は基礎コンクリート自体を断熱して、床下に外気が入ってこないようにしています。
とは言え、この方法が普及し始めたのはつい最近のことです。
吉田兼好が「家のつくりようは、夏を旨とすべし」と唱えたように、日本の家づくりは夏の高温多湿との戦いでした。そのため、床下に空気の流れを作ることができる床断熱の手法が主流となっていました。
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「基礎断熱」の特徴のメリット
基礎断熱のメリットには次のようなものがあります。
- 気密性を確保しやすい
- 地熱利用ができ、夏は涼しく冬暖かい
- 施工品質が確保しやすい
- 断熱材効果が高い
- 水道管の凍結が防げる
メリット① 気密性を確保しやすい
基礎断熱では外気から完全にシャットアウト。基礎全体がコンクリートを隙間なく敷き詰められています。そして上に乗る建物本体との隙間も気密パッキンで密封されています。
床下に外気が入らないから底冷えしづらく、また夏も熱気が入ってこないのがメリットです。
メリット② 地熱利用ができて、夏は涼しく冬暖かい
地中の温度は年間を通して10〜20℃程度で安定しています(参考:環境庁HP, https://www.env.go.jp/water/jiban/post_117.html)
そのため、床下が地上の温度に対して夏は涼しく、冬は暖かい環境に保たれるメリットがあります。
そのため、床断熱にくらべて底冷えしづらい室内にでき、光熱費の節約になります。
メリット③ 施工品質が確保しやすい
基礎断熱は、基礎が完成した段階のオープンな状態で施工できます。施工段階で状態も確認しやすく、また複雑な工程がないため、品質を担保しやすいメリットがあります。
一方で床断熱はある程度家の骨格が組み上がってきた後、根太(ねだ)と呼ばれる床面の骨組のスキマに断熱材を敷き詰めていきます。その上に床板を張っていくのですが、施工が悪いと床板と断熱材の間に隙間ができて断熱性が落ちたりカビが繁殖する原因にもなります。要は、施工が難しい。
安定した施工が実現できるのが基礎断熱のメリットです。
メリット④ 断熱効果が高い
基礎断熱は床断熱と比較してスペースが十分にあるので分厚い断熱材を使用することができ、断熱性能を高くしやすいメリットがあります。
床断熱の場合は、根太の厚みの分しか断熱材の厚みを確保できないので、どうしても薄い断熱材を使用することになります。そのため、特に冬は床が冷たく底冷えする家になりやすいデメリットがあります。
メリット⑤ 水道管の凍結が防げる
冬場に気温の下がる地域では、水道管の凍結が心配になります。
屋内の水道管は基礎の内部を通されますが、床断熱の場合は基礎内は外気と同じ気温なので、冬の冷えたアサなどは凍結する心配があります。そのため、断熱材を巻いたりしますがその効果は絶対ではありません。
水道管が凍ってしまった場合、最悪は水道管の破裂などにつながってしまいます。
基礎断熱の場合は、基礎内と室温の差が小さいため、水道管凍結の可能性はとても低くなります。
「基礎断熱」に対する「床断熱」の優位性
なにも床断熱は基礎断熱に対して全てが劣っているわけではありません。
床断熱には以下のようなメリットがあります。
- 床下空間があることで空気の循環を効率的に行える。
- 湿気やシロアリの被害も軽減される。
- リフォーム・リノベーションも比較的簡単に行える。
日本の夏は高温多湿な風土ですから、床下の空気循環を効率的に行える床断熱だと、湿気やシロアリの対策を効率的に行うことができます。
また、昔の家では床下の断熱がされていない場合もよくあります。その場合でも、床断熱のリフォームは施工例も多く、比較的簡単に行えます。
基礎断熱にして後悔しないために知っておくべきこと
基礎断熱はメリットばかりではありません。でも、デメリットも基本的に「把握していれば問題ない」ものになります。
家を建てる前に知っておきましょう
基礎断熱の“デメリット”
1. 基礎内に湿気がこもりやすい
基礎断熱では、基礎内部は密閉されているため湿気がこもりやすくなります。特に気を付けなければいけないのが建てて1~2年。コンクリートは水分が抜けきるにはそれくらいの期間が必要だと言われています。
通常、床材には木材が使用されているので湿気を含む空気は呼吸ができるのであまり心配はいりませんが、乾燥が不十分だった場合などは最悪カビが生じてしまうリスクがあります。
特に夏前に完成した場合は湿度が高いから注意が必要だね
床下エアコンなどの空調を利用することで、対策できることもあります。
2.シロアリ対策が必須
基礎断熱は一度施工してしまうと、床下を確認することはほとんどありません。少なくともご自身で確認することはないでしょう。そのため、もしシロアリが侵入していても発見することが困難です。気付いたころには被害が大きくなってしまうといったこともあり得ます。
シロアリ被害を防ぐためには、防蟻処理された断熱材を採用したり、基礎の周りにパイプを設置して防蟻薬剤を定期的に散布したりする必要があります。
また、基礎内が室内となるため使えない防蟻剤の種類もあるため、コストも高くなりがちです。
防蟻処理については業者によっては証明書も発行して保証してくれますので、そのようなサービスがあるのか事前に確認しておくのが良いでしょう。
基礎断熱でしかできない「床下暖房」の魅力
基礎を断熱しているからこそ実現可能な空調方式が「床下暖房」です。
- エアコンの吹き出し口を床下に作る
- 窓付近に吹き出し口(ガラリ)を設置する
- エアコンの暖気がガラリから出てくる
※蓄熱暖房器などでも可能
床下に電熱線や温水パイプを張り巡らせさせる床暖房にくらべて、非常に単純な構造をしています。
- 足元から部屋が均一に暖かくなる
- 床暖房よりも初期費用が安い
- 床材の制限もなし
- 省エネ
- 床下が乾燥状態に保ちやすい
工費も安くて省エネなんてすごい
床下暖房では床下温度を快適な温度よりも0.5〜2℃ほど高く設定すると、壁際から暖気が出てくるため外からの冷気が入ってきづらく、放射熱で暖かくなるため非常に快適です。
全館空調との相性も抜群です。
床下暖房システムを採用する場合は、床下の暖気が外に漏れないように気密がしっかりとれている必要があります。
また、基礎内が温まってからやっと部屋に暖気が伝わってくるので立ち上がりに時間がかかります。そのため、短時間に暖房を入れたり切ったりするのには向いてないため、24時間連続運転が前提となります。
また、夏場は冷気が床下にこもって床上に出てきづらいデメリットがあります。
夏用のエアコンも必要かもしれないね
家全体が均一に温まるようにするには、設計の経験が必要です。そのため、床下暖房の施工実績をつんでいる業者に依頼するのがいいでしょう。
基礎断熱を検討するかどうかは気密・断熱や冷暖房もあわせて考えよう
底冷えしない、でも夏も快適な家づくり。
基礎断熱は快適な高気密・高断熱住宅を実現するためには必須のアイテムです。
さらに床下の基礎内も空調に利用したりと、そのメリットを最大限活かしながら+αの効果も得ることができます。
しかし、正しい知識を身につけずいい加減な業者と契約してしまうと失敗する可能性もあります。
床下にカビが生えたり、暖房が家全体に行き渡らなかったり…
そうならないようにも、家を建てる前に特徴を知っておくことが大切です。