住宅の断熱性能を決定する断熱材を配置する方法は、その場所によって外断熱(外張り断熱)と内断熱(充填断熱)に分けられます。
昔から日本の住宅でよく採用されてきたのは内断熱ですが、最近では高気密・高断熱性に優れる外断熱が増えています。
でも本当に外断熱で大丈夫なんだろうか…?
この記事ではこれから家を建てる人に向けて、外断熱・内断熱それぞれのメリット・デメリットを解説します。
さらに内と外の両方の断熱を併用したダブル断熱(付加断熱)についても紹介します。
- 外断熱と内断熱の構造
- 外断熱のメリット・デメリット
- 内断熱のメリット・デメリット
- 外断熱の注意点
- ダブル断熱の特徴とメリット・デメリット
基本は「性能の外断熱」、「コストの内断熱」だよ
外断熱は住宅の骨組みの外側に断熱材を配置する構造
外断熱工法は、家の柱と外壁との間に断熱材を配置する工法です。構造物の外側に隙間なく断熱材を敷き詰めます。
断熱材にはポリスチレンフォームやポリウレタンフォームといった、厚みのある板状のプラスチック板を使用します。
外断熱工法は、断熱材を隙間なく敷き詰めるため、強力な気密性と断熱効果を得ることができ、隙間も少なくすることができます。
内断熱は住宅の骨組みの間に断熱材を配置する構造
内断熱工法は、家の柱と柱の間に断熱材を敷き詰めます。
断熱材にはグラスウールを使用することが多いですが、他にも使用できる断熱材の種類が多いのが特徴です。
日本では長年、内断熱工法が一般的だったため、技術的にも安心感があります。施工業者にも困ることはないでしょう。
外断熱と内断熱の比較
外断熱と内断熱を比較して、どちらの方がおすすめなのか。
結論から言うと、コストを度外視すれば外断熱工法の方がおすすめです。
外断熱と内断熱を比較すると、基本的には外断熱の方が性能が優れています。ただ、初期コストが高いため内断熱の方が多く採用されてきたというのが実情です。
外断熱工法 | 内断熱工法 | |
---|---|---|
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
外断熱と内断熱のメリット・デメリットについて詳しく解説していきましょう。
外断熱工法のメリット・デメリット
外断熱工法は、建物の周りを断熱材でぐるっと囲った工法です。
その構造によって得られるメリットとデメリットは次の通りです。
外断熱工法のメリット
外断熱工法のメリットには以下のようなものがあります。
- 断熱性能が高い
-
家の構造材の外部にぐるりと隙間なく断熱材を敷き詰めるため、熱の通り道がほとんどなく高い断熱性を発揮できます。
- 気密性が高い
-
断熱材に隙間がないため、気密性も高くできます。
高気密・高断熱な住宅を実現するためには、外断熱工法はピッタリだと言えます。 - 壁内結露が発生しづらい
-
外断熱の場合、断熱材が一番外側にあるため、構造材より内側の建物内の温度分布が緩やかになります。
そのため、は建物内で空気が冷えないため、結露が生じづらくなります。
建物内に結露ができないので、構造材が傷みづらくなるメリットもあります。
外断熱の場合、隙間なく断熱材が敷き詰められいるおかげで、その性能の高さが目立ちます。
高気密・高断熱な家を建てるなら外断熱がおすすめ
外断熱のデメリット
一方で、外断熱工法のデメリットは次の通りです。
- 初期コストが高い
-
外断熱工法は建物の周り全体を断熱材で覆ってしまうため、どうしても断熱材の使用量が増えてしまいます。
そのため、費用がかかってしまいます。
その代わり、高い断熱性・気密性を発揮することができます。 - 壁が分厚くなる
-
建物の柱といった構造材の外側に断熱材を貼るため、その分壁が分厚くなってしまいます。
土地に余裕がある時はそこまで気になりません。しかし狭小地に建物を建てる時は、壁の厚み分だけ部屋の中が狭くなってしまいます。
設計段階で部屋の広さに与える影響を考慮しましょう。
外断熱だと、断熱材による価格アップやスペースの問題がでてきますね。
内断熱工法のメリット・デメリット
日本でもともと主流だった内断熱ではどうでしょうか?
内断熱は柱の隙間のスペースに断熱材を充填しています。
内断熱工法のメリット
内断熱工法のメリットには以下のようなものがあります。
- ローコスト
-
柱部分には断熱材を充填しませんので、使用する断熱材の量が少なく、コストを抑えることができます。
コストパフォーマンスを重視するのであれば、内断熱工法の方がよりよい選択肢となります。 - スペース効率がいい
-
壁内のデッドスペースとなる部分に断熱材を詰めますので、スペースを取らず部屋内の広さを最大限にすることができます。
狭小地に建物を建てる場合には、外断熱だと部屋の中が狭くなってしまいますので、内断熱の方が向いていると言えます。 - リフォームしやすい
-
一般的な工法のため、対応できる業者が多いこと。また内張りを剥がすだけで断熱材が露出しますので、断熱リフォームを実施しやすいことがメリットに挙げられます。
基本的には、外断熱のデメリットの部分が反対になっていて、メリットとなっています。
外断熱にできないことが内断熱では実現できることになります。
内断熱のデメリット
一方で、内断熱工法のデメリットは次の通りです。
- 断熱性が劣る
-
柱などの構造材の厚み分しか断熱材を入れることができない上、構造材の部分には断熱材がありませんので、その分断熱性能が落ちてしまいます。
また、コンセントを配置する場所も断熱材を切り欠く必要があります。そのため、隙間も生じてしまうこともデメリットとなります。 - 壁内結露ができやすい
-
内断熱は空気が出入りしやすく、建物の内側と外側で温度差が出てきます。その影響で結露も発生しやすく、特に鉄筋コンクリート造の住宅ではその傾向が強くなります。
冬場に窓の所が結露で濡れてしまうことがありますが、壁の中でそのようなことが起こりやすいと考えれば良いでしょう。
壁内に結露が生じると断熱性能も落ち、カビが生じる原因にもなります。
内断熱では、性能部分がデメリットになります。
以上をまとめると、「性能の外断熱」、「コストと省スペースの内断熱」と考えるといいでしょう。
外断熱工法の注意点
設計・施工がちゃんとしていれば問題になることではありませんが、注意が必要です。
断熱材の固定には長いビスが必要で強度が不足する場合がある
外断熱は断熱材がズレたり外れてしまう恐れがあることが最大のデメリットです。
外断熱では、断熱材を外壁材と一緒に柱等の構造材に固定します。断熱材は厚みがありますので、長くて強度のあるビスが必要になります。
しかし、ビスを打ち込んでいる木材は気温や湿度によって収縮を繰り返します。この収縮によって隙間が出来てしまい、断熱材がずれてしまうような事が起こってしまいます。
最悪、釘が外れてしまった場合には外壁が断熱材の重みに耐えられなくなってしまい、結果的に外壁がずれ落ちてしまいます。
このような状態で地震が発生すると最悪です。
さらに湿気の対策をしていないと、ビスそのものがさびてしまうこともありますので注意が必要です。
もちろん、ちゃんとした業者なら問題ないはず!
外壁内に通気路が無いと湿気がこもる
外断熱工法は高気密・高断熱であり構造材内部の結露を防ぐ効果はたしかにあります。しかし、安易に外断熱工法を採用すると気密性が高い分湿気が中にこもってしまう可能性があります。
湿気がこもる欠点をカバーするために、湿気が外に逃げるよう通気路を設置します。その方法が外壁の通気工法です。
断熱材の外側は水蒸気が堰き止められやすい構造となっています。断熱材の外気側で水蒸気をせき止めないために、断熱材の外側に通気層を設けます。
外貼り断熱工法にするには、その外壁の工法をどのようにしていくのか、外壁材の構造をどのようなものにしていくのかが重要なポイントです。
外断熱と内断熱を併用する(ダブル断熱・付加断熱)メリット・デメリット
外断熱よりもより強固な断熱性能を得るために、外断熱と内断熱を併用する「ダブル断熱(付加断熱)」を採用する家もあります。
外断熱材と内断熱の併用によるメリット
当たり前と言われそうですが、ダブル断熱にすると断熱性がアップします。
通常、外断熱だけで必要な断熱性能を得ようとすると、分厚い断熱材が必要となります。そのため、強度に問題が出たりするのがご説明した通りです。
一方でダブル断熱工法とすると、内側にも断熱層がありますので、外側の断熱材の厚みを抑えることができます。外断熱の欠点を補うことができらのです。
内断熱の欠点である気密性の悪さや壁内結露のリスクも押さえることもできます。
外断熱材と内断熱の併用によるデメリット
高い性能をもつダブル断熱工法ですが、施工できる業者が限られている上、その品質にも目を配る必要があります。メーカーの実績や経験などの見極めが大切です。
また、内外両方に断熱を施すため、コスト面でもデメリットはあります。
しかし、高い断熱性能を発揮できれば住み始めた後の光熱費は節約できます。トータルコストで見ると、決して高くはないはずです。
断熱を強化すると暮らしが快適になります
断熱性能を強化することにより、室内の温度や湿度の変化が緩やかになり、快適な室内環境を実現することができます。
また、断熱性能の向上により、暖房や冷房の負荷も減りますので省エネとなります。長期的に見れば住宅の維持・メンテナンスコストを削減することができます。
快適に暮らせる断熱性能を得るためには、外断熱、内断熱、あるいはダブル断熱。どれをとってもそれなりにコストが掛かってくる部分になります。
しかし、ここをケチって夏は暑く冬寒いような家になってしまったらどうでしょうか?
断熱は目には見えないところだからこそ、しっかりとコストをかけて取り組むべきだと考えます。
関連 ≫ 基礎断熱は高気密・高断熱への鍵!