ガラス内部に金属ワイヤーを封入したもので、火災時に割れてもガラス片が飛散しにくく、防火性に優れています。主に防火地域の建物や防火戸などに使用されます。防犯性は高くありませんが、延焼防止材として法規上必要なケースが多いです。熱割れしやすいため設置条件には注意が必要です。

名称網入りガラス
大分類ガラス・透明素材
小分類 一般ガラス
特徴 金属線(主にステンレスや真鍮など)をガラス内部に封入して成形されたフロートガラスまたは型板ガラス。防火・飛散防止性能をもつ
肌目 ガラスの中に格子状の金属ワイヤーが見えるのが特徴。透明・型板・すりガラスタイプがあり、やや無機質な印象
用途 防火区画・共用廊下・階段室・玄関・工場・学校・病院などの開口部や間仕切り。割れてもガラスが飛び散りにくく、防火規制対応に使用
産地・メーカー 日本ではAGC、日本板硝子、セントラル硝子などが主要メーカー。住宅・ビル建築問わず、防火対象区域で広く使用される標準的建材

網入りガラスの概要・特徴

網入りガラスは、ガラスの内部に金網(ワイヤー)を封入した特殊なガラスです。ワイヤーの形状によって、菱形(ひしがた)の「ヒシワイヤー」や、格子状の「クロスワイヤー」などの種類があります。

ここで非常に重要なのが、このガラスが持つ本来の目的です。網入りガラスは、泥棒の侵入を防ぐ「防犯」のためではなく、火災時にガラスが崩れ落ちるのを防ぐ「防火」のために使われるガラスです。

火災の熱でガラスが割れても、内部の金網が破片を支え、ガラスがバラバラに脱落するのを防ぎます。これにより、窓に穴が空いて隣の部屋や建物へ炎が燃え広がるのを、一定時間食い止める役割を果たします。建築基準法で「防火設備」として定められており、特定の場所での使用が義務付けられています。

網入りガラスのメリットとデメリット

メリット

  • 優れた防火性能:火災時にガラスが割れても、破片の飛散・脱落を防ぎ、延焼を抑制します。
  • 万が一の際の安全性:地震や物の衝突で割れた場合でも、破片が飛び散りにくいため、普通のガラスに比べて二次災害のリスクを低減できます。

デメリット

  • 防犯効果はない:ワイヤーは簡単には切れないものの、ガラス自体は普通のガラスと同じ強度なので、道具を使えば簡単に割ることができ、防犯性能は期待できません。
  • 熱割れしやすい:ガラス内部の金網とガラス本体の熱膨張率の違いから、太陽の熱などでガラスが温まると、普通のガラスよりも「熱割れ」という現象が起きやすいです。
  • ワイヤーが錆びる:ガラスの断面や、表面の傷から水分が浸入すると、内部のワイヤーが錆びてしまうことがあります。
  • 視界が遮られる:透明なタイプでも、どうしても内部のワイヤーが視界に入り、景観を損ねてしまいます。

網入りガラスの用途

網入りガラスは、建築基準法で防火性能が求められる、特定の場所で主に使用されます。

  • 防火地域・準防火地域の窓:都市部の住宅が密集している地域で、隣家からの延焼を防ぐ、または隣家へ延焼させないために、外壁の窓やドアに使用が義務付けられている場合があります。
  • 建物の延焼のおそれのある部分:隣地境界線や道路中心線から一定の距離内にある窓など。
  • キッチンのコンロ近くの窓:火を使うコンロの近くにある窓は、防火上の理由から網入りガラスが使われることがあります。