耐熱性・耐薬品性・機械的強度に優れた熱硬化性樹脂で、電気絶縁材料や構造部材に使われます。建材としてはベークライト板や合板の接着剤として利用されることが多いです。高温環境でも安定した性能を発揮します。黒褐色で見た目に制限があるため、意匠性より機能性が重視される場面に適しています。

名称フェノール樹脂
大分類樹脂(プラスチック系)
小分類 熱硬化性樹脂
特徴 フェノールとホルムアルデヒドを重合してつくられる熱硬化性樹脂。耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性に優れる硬質素材
肌目 深い茶褐色や黒色が多く、ややマットで重厚感のある質感。耐久性が高く、表面は滑らかで堅牢
用途 高耐久の化粧板(フェノール樹脂積層板)、階段ステップ、手すり、キッチン天板、実験室用天板、電気絶縁材などに使用
産地・メーカー 日本では住友ベークライト、タキロンシーアイ、三菱ケミカルなどが主要メーカー。積層加工や成形品として国内で広く展開

フェノール樹脂の概要・特徴

フェノール樹脂は、世界で初めて人工的に作られたプラスチックで、「ベークライト」という名前でも知られています。非常に歴史の古い素材です。

最大の特徴は、非常に硬く、熱に強い(優れた耐熱性)ことと、電気を通しにくい(優れた電気絶縁性)ことです。この性質から、かつては黒電話や鍋の取っ手、電気製品の部品などに広く使われていました。

建材としては、そのままの形で使われることは少なく、主に高性能な断熱材や、家具などの化粧板の芯材として、その優れた性能を活かして利用されています。色は基本的に暗い褐色や黒色で、着色の自由度は低い素材です。

フェノール樹脂のメリットとデメリット

メリット

  • 極めて高い断熱性能:発泡させて作る断熱材「フェノールフォーム」は、数ある断熱材の中でもトップクラスの断熱性能を誇ります。
  • 優れた難燃性・耐熱性:熱に強く、燃えにくい性質を持っています。火にあたっても炭化するだけで、有毒ガスの発生が少ないため、火災時の安全性に貢献します。
  • 長期的な性能維持:時間が経っても性能が劣化しにくく、長期間にわたって高い断熱効果を維持します。
  • 高い寸法安定性:温度変化による伸縮が少なく、精密な部品や、強度が必要な化粧板の芯材に適しています。

デメリット

  • コストが高い:高性能な分、一般的な断熱材(グラスウールなど)や他の樹脂に比べて価格は高価です。
  • もろい性質がある:非常に硬い反面、強い衝撃が加わると割れたり欠けたりしやすい性質があります。断熱材として扱う際にも注意が必要です。
  • 酸に弱い:強い酸性の液体に触れると劣化する可能性があります。
  • デザインの制約:素材自体が暗い色のため、デザイン性が求められる表面材として単体で使われることはほとんどありません。

フェノール樹脂の用途

フェノール樹脂は、その優れた性能を活かし、主に建物の性能を高めるための機能材として使われます。

  • 高性能断熱材(フェノールフォーム):住宅の壁・床・屋根の断熱材として使用されます。薄くても高い断熱効果が得られるため、壁の厚みを抑えたい場合などに特に有効です。
  • 化粧板の芯材:キッチンの天板や家具に使われる「メラミン化粧板」の中間層(コア層)として使用されます。フェノール樹脂を染み込ませた紙を何層にも重ねることで、化粧板全体の強度や耐久性を高めています。
  • 電気絶縁部品:(建材とは少し異なりますが)プリント基板やコネクター、ブレーカーの部品など、高い電気絶縁性が求められる部分で今でも活躍しています。