セメントと砂を型に入れて成形した屋根材で、粘土瓦に比べて軽量かつ安価なのが特徴です。塗装により多彩な色合いが可能で、デザイン性にも対応できます。定期的な塗装メンテナンスが必要ですが、耐火性や耐水性は十分です。耐久年数は粘土瓦より短めです。

名称セメント瓦
大分類セラミック・タイル
小分類 セメント系
特徴 セメントと砂を主原料にして型で成形し、塗装仕上げを施した屋根材。粘土を焼いた陶器瓦とは異なり、焼成しない乾式製法
肌目 表面は塗装によるツヤまたはマットな質感。形状は和瓦風から洋瓦風まで多様で、均一で重厚感ある見た目
用途 戸建住宅の屋根材として使用。耐火性・耐候性に優れるが、経年で塗膜の劣化や色あせがあるため、定期的な再塗装が必要
産地・メーカー 日本ではかつて兵庫県・岐阜県・三州地域(愛知県)などで多く生産されたが、現在は減少傾向。輸入品や在来工法の補修材として流通あり

セメント瓦の概要・特徴

セメント瓦は、その名の通りセメントと砂を主原料として、水で練り混ぜて瓦の形に成形し、表面を塗装で仕上げた屋根材です。

粘土を焼き固めて作る日本の伝統的な「粘土瓦(陶器瓦)」とは全く異なるもので、製造方法としては人工スレート(コロニアルなど)に近い工業製品です。型を使って製造するため、製品の形状や寸法が均一で施工しやすいという特徴があります。

最大の特徴は、表面の塗装によって色や防水性能を維持している点です。この塗装が劣化すると、セメント自体が水を吸うようになり、屋根材としての性能が低下します。昭和から平成初期にかけて広く普及しましたが、現在ではより軽量で高性能な屋根材が主流となり、新築で採用されることはほとんどありません。

セメント瓦のメリットとデメリット

メリット

  • コストが比較的安価(だった):製造が容易で、普及当時は粘土瓦に比べて安価に提供されていました。
  • デザインの自由度(があった):塗装で色付けするため、様々な色の瓦を作ることができました。洋風のデザインにも対応しやすかったです。
  • 耐火性が高い:主原料がセメントなので、火に強く燃えません。

デメリット

  • 定期的な塗装メンテナンスが必須:表面の塗装が劣化すると、防水性が失われ、コケやカビが発生しやすくなります。10年~15年を目安に再塗装が必要です。
  • 重量がある:粘土瓦と同様に重く、建物への負担が大きいです。耐震性の観点からは不利になります。
  • 衝撃で割れやすい:塗装が劣化して水分を含むようになると、セメントがもろくなり、強風による飛来物や、人が乗った際の衝撃で割れやすくなります。
  • 現在では製造が少ない:主流の屋根材ではなくなったため、製造しているメーカーが減り、同じ形の瓦を手に入れて部分的に交換することが難しくなっています。

セメント瓦の用途

セメント瓦の用途は、屋根材に限定されます。

  • 過去の住宅の屋根材:主に昭和から平成初期にかけて建てられた戸建て住宅の屋根材として広く使われていました。現在、新築で積極的に採用されることはほとんどありません。