アスファルトを含浸させたシートを重ねて貼り付ける防水工法で、耐久性・信頼性が非常に高く、屋上防水の定番です。熱工法(加熱溶融)や常温工法があり、建物の規模や環境に応じて選べます。厚みがあり耐候性も高いため、20年以上の耐用年数も可能です。施工には専門技術と時間がかかり、重量もあるため構造への負荷に配慮が必要です。
名称 | アスファルト防水 |
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大分類 | 防水・断熱材 |
小分類 | - |
特徴 | アスファルト(石油精製残渣)を主成分とし、フェルトなどのシートに含浸・積層して使用する防水材。常温や加熱施工で成膜するタイプがある |
肌目 | 黒褐色で重厚感のある仕上がり。複数層を重ねて施工するため厚みがあり、表面は砂付き仕上げや保護モルタル仕上げが一般的 |
用途 | ビル・マンション・工場の屋上、地下構造物、RC構造の水平スラブ部など。長寿命・信頼性が高く、公共施設でも定番の防水工法 |
産地・メーカー | 原材料のアスファルトは国内外の石油会社から供給。製品化は田島ルーフィング、日新工業、三島産業などが国内大手メーカーとして展開 |
アスファルト防水の概要・特徴
アスファルト防水は、液状に溶かしたアスファルトと、アスファルトを含ませたシート状の材料(ルーフィング)を何層にも重ねて、建物の屋上などに分厚く丈夫な防水層を作る工事のことです。
100年以上の非常に長い歴史を持つ、最も信頼性の高い防水工法の一つです。その施工方法には、主に3つの種類があります。
- 熱工法:釜でアスファルトを高温に熱して溶かし、それを流しながらルーフィングを貼り重ねていく、最も伝統的な工法です。
- トーチ工法:ルーフィングの裏面に塗られた改質アスファルトを、バーナーの炎で炙って溶かしながら貼り付けていく工法です。
- 常温工法:接着剤や、粘着層のついたルーフィングを使って、火を使わずに常温で貼り重ねていく工法です。
最大の特徴は、複数の層を重ねることで、継ぎ目のない一体的で、水密性の極めて高い防水層を形成できる点です。
アスファルト防水のメリットとデメリット
メリット
- 非常に高い防水性能:何層にも重ねて作る分厚い防水層は、水を通さず、長期間にわたって建物を雨漏りから守ります。
- 実績と信頼性:長い歴史の中で性能が実証されており、多くの大規模な建築物で採用されている、信頼性の高い工法です。
- 施工の自由度が高い:シートを貼り重ねていく工法なので、複雑な形状の屋上や、配管などが突き出している場所にも対応しやすいです。
- 耐久性が高い:防水層の上にコンクリートなどを打って保護すれば(保護防水)、20年以上の長期間にわたって性能を維持できます。
デメリット
- 施工時の臭気や煙:特に熱工法では、アスファルトを溶かす際に特有の臭いや煙が発生するため、住宅が密集した場所では近隣への配慮が必要です。
- 重量がある:防水層自体が重いため、木造住宅などの軽量な建物では、構造的な負担が大きくなる場合があります。
- 火気を使用するリスク:熱工法やトーチ工法では火を使うため、施工時の火災に対する厳重な安全管理が求められます。
- 天候に左右される:雨の日や気温が低い日には施工できないため、工期が天候に影響されやすいです。
アスファルト防水の用途
アスファルト防水は、その高い信頼性から、主に大規模な建物の屋上で採用されます。
- マンション・ビルの屋上:最も代表的な用途です。平らな屋根(陸屋根)の防水工事で、広く使われています。
- 学校・病院などの公共施設:多くの人が利用し、高い安全性が求められる建物の屋上。
- 地下構造物:地下駐車場や地下室の外壁など、常に土からの水圧がかかる場所の防水にも、その高い水密性が活かされます。
- 住宅:一般の勾配屋根の住宅で使われることはありませんが、鉄筋コンクリート造の住宅や、陸屋根を持つ木造住宅などで採用されることがあります。