非常に高い引張強度と耐熱性を持つ高機能繊維で、防火材・耐衝撃材・補強材として使用されます。軽量かつ難燃性に優れ、火災リスクの高い部位や構造補強に適しています。価格が高いため用途は限定的ですが、安全性重視の現場では有効です。建築分野ではCFRPと同様に補強用途で注目されています。
名称 | アラミド繊維 |
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大分類 | 繊維・布・紙系 |
小分類 | 人工繊維 |
特徴 | 芳香族ポリアミド系高機能合成繊維。代表的な製品に「ケブラー®(デュポン)」「テクノーラ®(帝人)」などがあり、非常に高い強度と耐熱性を持つ |
肌目 | 表面はマットでやや光沢のある黄〜黄緑色繊維が多く、しなやかで軽いが非常に強靭。織物やシート状で使用されることが多い |
用途 | 耐震補強材(アラミド繊維シート)、橋梁補強、建築物の構造補修、内装パネル、断熱材など。高強度・耐衝撃・耐薬品・耐熱性に優れる |
産地・メーカー | 日本では**帝人(テクノーラ)が世界有数のメーカー。アメリカのデュポン(ケブラー)**も有名で、建設用アラミド製品は国内外で広く流通 |
アラミド繊維の概要・特徴
アラミド繊維は、非常に高い性能を持つ合成繊維で、「スーパー繊維」の一つに数えられます。防弾ベストに使われる「ケブラー®」や、消防服に使われる「ノーメックス®」といった商品名で広く知られています。
建材としては、この繊維を単体で使うことはなく、主に炭素繊維と同様に、エポキシ樹脂などと組み合わせてシート状やロッド状の「アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)」として利用されます。
最大の特徴は、「軽くて、引っ張る力に非常に強く、衝撃を吸収する能力が高い」という点です。同じ重さで比べると、鋼鉄の数倍の引張強度を持ちながら、しなやかで粘り強い性質を持っています。また、電気を通さない「電気絶縁性」に優れているのも大きな特徴です。
アラミド繊維のメリットとデメリット
メリット
- 優れた引張強度と耐衝撃性:非常に高い強度と、衝撃エネルギーを吸収する粘り強さを併せ持ちます。これにより、構造物の強度や靭性(ねばり強さ)を向上させ、地震の際の破壊を防ぎます。
- 軽量であること:鉄などに比べて非常に軽いため、建物に余計な負担をかけずに補強することができます。
- 高い耐熱性・難燃性:熱に強く、簡単には燃えません。火にあたっても溶けずに炭化するため、火災時にも一定の性能を保ちます。
- 電気を通さない:優れた電気絶縁性を持つため、電気設備が近くにある場所や、鉄道関連の施設などでも安心して使用できます。
デメリット
- 非常に高価:炭素繊維と同様、極めて高性能な分、材料費・加工費ともに非常に高額です。
- 紫外線に弱い:太陽光(紫外線)に長時間さらされると、強度が低下する性質があります。そのため、屋外で使用する場合は、必ず塗装などで表面を保護する必要があります。
- 吸湿性がある:水分を吸収しやすい性質があり、湿気によって強度が低下する可能性があります。乾燥状態を保つことが重要です。
- 専門的な技術が必要:材料の特性を熟知した専門家による設計と、高度な技術を持つ職人による施工が不可欠です。
アラミド繊維の用途
アラミド繊維は、その特殊な性能から、主に既存の建物を補強するという目的で、限定的に使用されます。
- 耐震補強:最も代表的な用途です。コンクリートの柱や梁、壁などにアラミド繊維シートを貼り付けて補強し、地震に対する強度や粘り強さを高めます。
- コンクリートの剥落防止:トンネルの天井や高速道路の橋桁の裏側などに貼り付け、老朽化したコンクリートの塊が剥がれ落ちるのを防ぐために使われます。
- 煙突の補強:地震の揺れや風圧で倒壊する危険性のある、古いコンクリート製やレンガ積みの煙突の補強にも利用されます。