衝撃に強く、硬さと耐熱性を兼ね備えたプラスチックです。キッチンパネルや内装部品、住宅設備のカバー類など幅広く使用されます。成形しやすく寸法安定性が高いため、精密な部材にも対応できます。紫外線や薬品にはやや弱いため、用途には注意が必要です。
名称 | ABS樹脂 |
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大分類 | 樹脂(プラスチック系) |
小分類 | 熱可塑性樹脂 |
特徴 | アクリロニトリル(A)・ブタジエン(B)・スチレン(S)の3成分を組み合わせた熱可塑性樹脂。バランスの取れた機械特性をもつ |
肌目 | 表面はなめらかで、適度な光沢と剛性をもつ。成形しやすく、表面塗装や加工によって多様な質感に仕上げられる |
用途 | 浴室パネル・洗面化粧台・トイレ便座・壁面カバー・建具部材・住宅設備の外装パーツなど。強度・耐衝撃性・意匠性を求められる箇所に使用 |
産地・メーカー | 日本では住友化学、三菱ケミカル、旭化成などが主要メーカー。国内製造の住宅設備・樹脂建材に広く使われている |
ABS樹脂の概要・特徴
ABS樹脂は、「アクリロニトリル(A)」「ブタジエン(B)」「スチレン(S)」という3種類のプラスチックの成分を組み合わせて作られた、非常にバランスの取れた高性能なプラスチックです。
それぞれの成分が持つ長所、つまり、アクリロニトリルの「硬さ・耐熱性」、ブタジエンの「柔軟性・耐衝撃性(ゴムの性質)」、スチレンの「光沢・加工のしやすさ」を、一つの素材で実現しているのが最大の特徴です。
この「硬くて、衝撃に強く、見た目が美しい」という万能な性質から、自動車の部品や家電製品、おもちゃ(レゴブロックなど)といった幅広い分野で活躍しています。建材としては、主に住宅設備機器のケースや内装部材などに使われています。
ABS樹脂のメリットとデメリット
メリット
- バランスの取れた物性:硬さと、衝撃を吸収するしなやかさを両立しており、丈夫で壊れにくい製品を作ることができます。
- 美しい表面仕上げ:表面に光沢があり、高級感のある見た目に仕上げることができます。着色や塗装、メッキといった二次加工もしやすいです。
- 優れた加工性:熱で溶かして型に流し込む「射出成形」に適しており、複雑な形状の部品を高い精度で効率よく大量生産できます。
- 寸法安定性が高い:温度や湿度の変化による収縮や膨張が少なく、精密な部品にも向いています。
デメリット
- 耐候性が低い:太陽の紫外線に弱く、屋外で長期間使用すると、劣化して黄色っぽく変色したり、強度が低下してもろくなったりします。
- 薬品に弱い:シンナーやアルコールなど、一部の有機溶剤に触れると表面が溶けたり、ひび割れを起こしたりすることがあります。
- 燃えやすい:素材そのものは燃えやすい性質のため、製品によっては難燃剤を添加するなどの対策が必要です。
ABS樹脂の用途
ABS樹脂は、そのバランスの良さと美しい仕上がりから、特に人が直接触れたり、目にしたりする住宅設備機器や内装部材に広く使われています。
- 住宅設備機器の筐体(ケース):給湯器のリモコン、インターホン、火災報知器、換気扇のカバー、コンセントやスイッチのプレートなど。
- 内装部材:ドアのレバーハンドルや引き出しの取っ手の一部、建具の枠、巾木(はばき)や廻り縁(まわりぶち)など。
- 水まわり製品:シャワーヘッド、温水洗浄便座の本体やリモコン部分など。
- 家具の部材:テーブルや棚板の縁に貼るエッジ材や、家具の取っ手など。