渋柿を発酵・熟成させて作られる自然塗料で、防腐・防虫・防水効果を備えています。木材に塗ることで、年月とともに茶褐色に変化し、味わい深い風合いが出ます。揮発性有機化合物(VOC)を含まず、環境や健康にやさしいのが特徴です。においにクセがあるため、室内使用時は換気や熟成期間に配慮が必要です。

名称柿渋塗料
大分類塗料
小分類 自然塗料
特徴 渋柿の果汁を発酵・熟成させた天然塗料(タンニンを多く含む)。近年では水性タイプや改良型の柿渋塗料も市販されている
肌目 塗り重ねるごとに深まる茶褐色の艶と風合いが特徴。木目を活かす自然な仕上がりで、経年で徐々に色が濃くなる
用途 木部(柱・梁・外壁板・家具・床など)の保護や防腐、防虫、防カビ、抗菌目的。伝統建築や自然素材志向の住宅に多用される
産地・メーカー 主に京都、奈良、岐阜(美濃)、和歌山など。製品は京都の小堀産業、和歌山の山崎商店などが有名。DIY用としても流通あり

柿渋塗料の概要・特徴

柿渋(かきしぶ)塗料は、青い未熟な渋柿を絞り、その汁を発酵・熟成させて作られる、日本に古くから伝わる伝統的な天然塗料です。

主成分である「カキタンニン」が、空気中の酸素と反応して硬化することで、木材の表面に保護膜を形成します。これにより、防水、防腐、防虫といった効果を発揮します。

塗りたては薄い茶色ですが、時間と共に色が深まっていき、独特の味わい深い色合いに変化していく「経年変化」も大きな特徴です。化学物質を一切含まないため、人体にも環境にも非常に優しい塗料として、自然素材にこだわる家づくりで再注目されています。

柿渋塗料のメリットとデメリット

メリット

  • 安全性が非常に高い:100%天然成分のため、シックハウス症候群の原因となる化学物質の心配がなく、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心して使えます。
  • 木材の保護効果:防腐・防虫・防水効果により、木材の耐久性を高め、長持ちさせます。
  • 木の呼吸を妨げない:表面をプラスチックのような膜で完全に覆ってしまうのではなく、木材に浸透して保護するため、木が持つ本来の調湿機能を損ないません。
  • 経年変化を楽しめる:年月と共に色が深まり、独特の風合いが増していくため、時間と共に愛着がわきます。

デメリット

  • 特有の臭いがある:発酵させて作られるため、施工中や乾燥後しばらくは、酸っぱいような独特の臭いがします。
  • 乾燥に時間がかかる:硬化するまでに時間がかかり、色が安定するのにも数ヶ月単位の時間が必要です。
  • 色ムラが出やすい:木材の吸い込み方の違いによって、均一に塗るのが難しく、色ムラが出やすいです。美しい仕上がりには、職人の経験と技術が求められます。
  • メンテナンスが必要:特に屋外で使用した場合、風雨や紫外線によって効果が薄れていくため、数年ごとの定期的な塗り直しが必要です。

柿渋塗料の用途

柿渋塗料は、その特性から、主に木材の保護と着色を目的として、内外装に使われます。

  • 内装の木部塗装:無垢材のフローリング、壁板(羽目板)、柱、梁など。木の風合いを活かしながら保護したい場合に最適です。
  • 外装の木部塗装:板塀、ウッドデッキ、濡れ縁など、屋外の木材の防腐・防水塗装として。
  • 木製建具・家具の塗装:テーブルや椅子、棚などの家具や、木製のドアや窓枠の塗装にも使われます。