エポキシ樹脂にコールタールを加えたもので、防水性・耐薬品性・耐久性に非常に優れています。主に水槽、下水道、基礎部分、埋設部など水に接する構造物に使われます。厚膜施工が可能で長期保護が期待できますが、においや環境への影響に注意が必要です。住宅よりもインフラ分野で多く使用されます。
名称 | タールエポキシ系塗料 |
---|---|
大分類 | 塗料 |
小分類 | - |
特徴 | エポキシ樹脂にコールタール(石炭由来)を添加した2液型塗料。硬化剤との反応で高い防水・防食性能を発揮する特殊塗料 |
肌目 | 黒または濃褐色の厚膜で、半光沢〜マットな仕上がり。やや粘性が高く、重厚感のある塗膜となる |
用途 | 埋設鉄管・鋼管杭・下水道構造物・港湾構造物・地中基礎・橋脚・水槽など。耐水・耐薬品・防錆性に極めて優れるが、紫外線に弱く屋外露出には不向き |
産地・メーカー | 日本では関西ペイント、日本特殊塗料、エスケー化研、JFEケミカルなどが製造。土木・インフラ分野で使用されることが多い |
タールエポキシ系塗料の概要・特徴
タールエポキシ系塗料は、強力な性能を持つエポキシ樹脂に、「コールタール」という特殊な油(石炭を乾留して得られる副産物)を混合した、非常に高性能な防食塗料です。
最大の特徴は、水や塩分、薬品に対して、他の塗料とは比較にならないほどの極めて高い「防水性」と「防食性(腐食を防ぐ力)」を発揮することです。一度の塗装で、分厚く強靭な黒い塗膜を形成します。
ただし、コールタールには有害物質が含まれていることや、強い臭気、紫外線に弱いといった点から、一般の住宅建築で使われることはまずありません。主に、過酷な環境下で鉄やコンクリートを保護するための、専門的な工業用塗料として位置づけられています。
タールエポキシ系塗料のメリットとデメリット
メリット
- 極めて高い防食性能:海水や化学薬品、汚水などが浸透するのを強力に防ぎ、構造物を長期間にわたって腐食から守ります。
- 厚い塗膜を形成できる:一度の塗装で厚く塗ることができるため、高い保護性能と耐久性を確保できます。
- 耐水性・耐薬品性に優れる:常に水に浸かっている場所や、薬品にさらされるような過酷な環境でも、塗膜が劣化しにくいです。
デメリット
- 環境・健康への懸念:主成分のコールタールには、発がん性が指摘される物質が含まれているため、使用や管理には厳重な注意が必要です。
- 紫外線に弱い:屋外で太陽光に当たると、表面が劣化してもろくなります。そのため、必ず他の塗料で上塗りするか、光が当たらない場所で使われます。
- 色の制約と強い臭気:色は基本的に黒色のみで、施工中や乾燥中には特有の強い臭いが発生します。
- 重ね塗りが困難:タール成分が、上に塗る塗料を溶かしてしまうことがあるため、塗り替えの際には、特殊な下塗り材を使うなどの専門的な知識が必要です。
タールエポキシ系塗料の用途
タールエポキシ系塗料は、その特殊な性能と性質から、一般住宅では使われず、主に社会インフラなどの非常に過酷な環境下で、防食を目的として使用されます。
- 船舶・海洋構造物:船の底や、港の岸壁、桟橋など、常に海水にさらされる鉄部の防食。
- 上下水道施設・タンク類:下水処理場や浄水場のコンクリート槽、パイプライン、石油タンクの内面などの保護。
- 橋梁などの鋼構造物:橋の部材など、高い耐久性が求められる鉄骨の防食塗装。