一定時間火災に耐えることができる特殊ガラスで、防火・準防火地域の開口部に使用されます。網入りガラスや特殊加工ガラスなど、法規に適合したものが用いられます。延焼を防ぎながら、視界や採光も確保できるのが特徴です。規定の性能等級に適合しているか確認が必要です。

名称防火ガラス
大分類ガラス・透明素材
小分類 機能ガラス
特徴 耐熱強化ガラスやワイヤ入りガラス、特殊中間膜を用いた合わせガラスなど、一定時間の耐火性能を有する安全ガラス。国の防火基準に適合した構造
肌目 製品によって異なるが、透明なまま耐火性能を持つタイプ(透明耐熱ガラス)や、金属ワイヤが入った網入りタイプがある
用途 防火地域や準防火地域の開口部(窓・ドア)に使用。特に延焼のおそれのある部分に必要とされ、建築基準法で使用が義務づけられていることも
産地・メーカー 日本ではAGC(マイボーカ)、日本板硝子(セキュレ)、セントラル硝子などが製造。防火認定を取得した製品として流通している

防火ガラスの概要・特徴

防火ガラスは、その名の通り、火災時に炎や熱の延焼を防ぐことを目的とした特殊なガラスの総称です。

ここで非常に重要なのは、「防火ガラス」は一つの製品名ではなく、「網入りガラス」や「耐熱強化ガラス」など、防火性能を持つガラス全般を指す言葉であるという点です。

その役割は、火災の熱でガラスが割れても、すぐに脱落して穴が空いてしまうのを防ぎ、一定時間、炎や煙が隣の部屋や建物へ燃え広がるのを食い止めることです。これにより、安全に避難する時間を確保します。建築基準法によって、建物の場所や用途に応じて使用が義務付けられている、非常に重要な建材です。

防火ガラスのメリットとデメリット

メリット

  • 延焼を防止できる:最大のメリットです。火災の際に炎の侵入や拡大を防ぎ、人命や財産を守ります。
  • 避難時間を確保できる:火災の広がりを遅らせることで、安全に避難するための貴重な時間を稼ぐことができます。
  • 視界を確保できる(透明タイプの場合):近年では、網(ワイヤー)が入っていない透明な防火ガラスも普及しており、防火性能とクリアな視界・デザイン性を両立できます。

デメリット

  • 非常に高価:特殊な性能を持つため、一般的なガラスに比べて材料費も施工費も大幅に高くなります。
  • 製品・サイズが限定される:防火性能は国による認定が必要なため、誰でも自由に作れるわけではありません。使用できる製品やサイズには制限があります。
  • 重量がある:特殊な構造のため、一般的なガラスより重くなる傾向があり、サッシや建物の構造にも配慮が必要です。
  • 防犯性能はない:防火と防犯は全く別の性能です。防火ガラスであっても、工具を使えば比較的簡単に割ることができるため、防犯目的の場合は「合わせガラス」などと組み合わせる必要があります。

防火ガラスの用途

防火ガラスは、建築基準法で定められた、火災の延焼リスクが高い場所で主に使用されます。

  • 防火地域・準防火地域の窓:都市部の住宅が密集したエリアで、建物の外壁に設けられる窓やドアに、使用が義務付けられています。
  • 延焼のおそれのある部分:隣の敷地や道路との境界線から、一定の距離内にある窓やドアなど、法的に延焼リスクが高いと定められた部分。
  • 建物内部の防火区画:マンションの廊下や階段、商業施設など、火災時に煙や炎を一定区画に封じ込める必要がある壁(防火区画)に設置される窓やドア。
  • キッチンのコンロ周りの壁や窓:火元に近いため、内装制限によって不燃材料の使用が義務付けられている場合に、採光のために設置されます。