通常のフロートガラスを加熱・急冷して強度を高めたガラスで、同厚のガラスの約3~5倍の強度があります。割れると細かい粒状になるため、ケガのリスクを軽減できます。店舗のガラス扉や高所の窓、浴室など安全性が求められる場所に使われます。強化後の加工ができないため、事前の寸法設計が重要です。

名称強化ガラス
大分類ガラス・透明素材
小分類 機能ガラス
特徴 フロートガラスを加熱(約650℃)後、急冷して表面に強い圧縮応力を与えた安全ガラス。破壊時は粒状に砕けるため安全性が高い
肌目 見た目は通常の透明ガラスとほぼ同じ。ただし、光の屈折や熱加工痕(ロール波)がわずかに見える場合もある
用途 出入口ドア、手すり、窓、シャワーブース、ガラス壁、トップライト、テーブルトップなど。耐衝撃性・安全性・耐熱性が求められる場所に使用
産地・メーカー 国内ではAGC、日本板硝子、セントラル硝子などが主要メーカー。全国のガラス加工工場で強化処理が行われ、建材メーカーを通じて供給される

強化ガラスの概要・特徴

強化ガラスは、一般的なフロートガラスに特殊な熱処理を施して、強度を大幅に高めた安全性の高いガラスです。

製造方法は、フロートガラスを軟らかくなる直前まで加熱した後、ガラスの表面に冷たい空気を均一に吹き付けて急冷します。これにより、ガラスの表面には「圧縮層」という硬い層ができ、内部には「引張層」という力が働く層ができます。この構造のおかげで、通常のガラスの3~5倍の強度を持つようになります。

最大の特徴は、その特徴的な割れ方です。万が一、強度を超える力が加わって割れる際には、普通のガラスのように鋭い刃物状にはならず、細かい粒状に砕け散ります。これにより、割れたガラスの破片による大怪我のリスクを大幅に低減できます。

強化ガラスのメリットとデメリット

メリット

  • 高い強度:同じ厚さのフロートガラスに比べて3~5倍の強度があり、衝撃や風圧に強いです。
  • 安全な割れ方:割れても破片が粒状になるため、大怪我に繋がりにくいです。
  • 耐熱衝撃性が高い:急激な温度変化にも強く、普通のガラスが割れてしまうような温度差(約170℃~200℃)にも耐えることができます。

デメリット

  • 後加工が一切できない:一度、強化ガラスに加工してしまうと、後から切断したり、穴をあけたりすることはできません。割れてしまうため、全ての加工は強化処理の前に行う必要があります。
  • 一点集中型の衝撃に弱い:キリのような鋭利なもので一点を突かれるような衝撃には、比較的簡単に割れてしまいます。
  • 突然破損することがある(自然破損):非常に稀ですが、製造時に混入したごく小さな不純物の影響で、何も衝撃が加わっていないのに突然、全体が粉々に割れることがあります。
  • コストが高い:熱処理などの加工が必要なため、一般的なフロートガラスに比べて価格は高くなります。

強化ガラスの用途

強化ガラスは、その高い強度と安全性を活かして、人がぶつかる可能性のある場所や、高い安全性が求められる場所で広く使われます。

  • ガラスドア・間仕切り:店舗の入り口や、オフィスの会議室、住宅のリビングドアなど、全面がガラスでできたドアや間仕切り壁。
  • 家具・建具:テーブルの天板(ガラストップ)や、食器棚の扉、ガラス製の棚板など。
  • 浴室のドア・シャワーブース:万が一の際の安全性を考慮して、浴室まわりで使われます。
  • 自動車の窓:自動車のサイドウィンドウやリアウィンドウは、事故の際の脱出路確保と乗員の安全のために強化ガラスが使われています(※フロントガラスは合わせガラスです)。