高強度・軽量・耐腐食性を持つ先端素材で、コンクリート補強や外装材、構造体の補強に使用されます。鉄の数倍の強度を持ちながらも軽く、耐久性に優れています。非常に高価で、加工にも専門的な技術が必要です。高層建築や橋梁など、特別な耐久性が求められる場面で活用されます。
名称 | 炭素繊維(CFRP) |
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大分類 | 繊維・布・紙系 |
小分類 | 人工繊維 |
特徴 | 炭素繊維を強化材として、エポキシ樹脂などの樹脂と複合化した高機能材料(炭素繊維強化プラスチック)。軽量で超高強度 |
肌目 | 表面は黒く光沢のある編み目状が特徴(織物状の場合)。マットな仕上げも可能で、見た目にも高機能感がある |
用途 | 橋梁補強・トンネル・耐震補強(炭素繊維シート)、構造補修材、軽量建材、意匠パネルなど。高強度・軽量・耐腐食性・耐疲労性に優れる |
産地・メーカー | 日本は世界有数の生産国で、東レ・帝人・三菱ケミカルなどが大手メーカー。建設用CFRPも各社が施工技術と製品を展開中 |
炭素繊維(CFRP)の概要・特徴
炭素繊維(たんそせんい)は、アクリル繊維などを高温で蒸し焼きにして作られる、炭素原子だけで構成された非常に細い繊維です。建材としては、この炭素繊維を単体で使うことはなく、エポキシ樹脂などのプラスチックと組み合わせて一体化させた「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」として利用されます。
CFRPの最大の特徴は、「軽くて、強く、錆びない」という、金属材料の常識を覆すほどの圧倒的な性能です。重さは鉄の約4分の1と非常に軽量でありながら、強度は鉄の10倍以上とも言われます。
また、金属のように錆びることがないため、塩害などにも非常に強く、薬品にも侵されにくい優れた耐久性を持ちます。ただし、その高性能さゆえに、極めて高価な材料でもあります。
炭素繊維(CFRP)のメリットとデメリット
メリット
- 軽量かつ高強度:非常に軽いため、建物への負担を最小限に抑えながら、構造を大幅に強化することができます。
- 優れた耐久性・耐食性:錆びることがなく、塩分や化学薬品にも強いため、過酷な環境下でも長期間にわたって性能を維持します。
- 高い設計自由度:繊維であるため、シート状にして曲面に貼り付けたり、型を使って複雑な形状の部材を作ったりと、デザインの自由度が高いです。
- 疲労に強い:繰り返し力が加わっても、金属のように疲労で壊れにくい性質があります。
デメリット
- 極めて高価:材料費も加工費も、鉄やコンクリートなどとは比較にならないほど高額です。住宅で気軽に使える材料ではありません。
- 熱に弱い:繊維自体は熱に強いですが、それを固めている樹脂が熱に弱いため、高温になると強度が低下します。耐火性には課題があります。
- 一点集中や衝撃に弱い:引っ張る力には非常に強いですが、横からの強い衝撃や、鋭利なもので突かれるような力には弱い場合があります。
- 専門的な技術が必要:設計から施工まで、炭素繊維の特性を熟知した高度な専門知識と技術が不可欠です。
炭素繊維(CFRP)の用途
CFRPは、その圧倒的な性能とコストから、一般の住宅で構造材として使われることはまずありません。主に、既存の建築物の性能を高めるための「補強材」として使われます。
- 耐震補強:最も代表的な用途です。地震に備えて、既存のコンクリート製の柱や梁に、炭素繊維シートをエポキシ樹脂で貼り付けて巻き、強度や粘り強さを向上させます。
- インフラの補修・補強:高速道路の橋脚や床版、トンネルの壁など、老朽化した社会インフラを、大きな解体工事をせずに補強するために広く利用されています。
- 特殊な建築部材:デザイン上、非常に薄くて長い庇(ひさし)など、従来の材料では実現不可能な特殊な部材を、オーダーメイドで作る場合に採用されることがあります。