工場であらかじめ成形・養生されたコンクリート部材を現場で組み立てる工法です。品質が安定し、工期を大幅に短縮できるのが大きなメリットです。現場作業が少ないため、天候の影響を受けにくく効率的です。ただし、搬送・設置に大型機械が必要な場合があります。
名称 | PC(プレキャストコンクリート) |
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大分類 | コンクリート・セメント系 |
小分類 | コンクリート |
特徴 | 工場であらかじめ製造された鉄筋コンクリート部材(プレキャスト部材)。RCと同様にコンクリート+鉄筋の複合材だが、現場ではなく工場成型 |
肌目 | 仕上がりが精密で均一な表面をもつ。打ち放し調・模様付き・塗装済みなど仕上げバリエーションも豊富 |
用途 | 建物の梁・柱・床・外壁・擁壁・階段・パネル・インフラ構造材(橋脚・トンネル部材など)。工期短縮・品質安定に優れる |
産地・メーカー | 全国のプレキャスト専門工場で製造。代表的メーカーには日本コンクリート工業、積水化学工業、センクシアなどがある |
PC(プレキャストコンクリート)の概要・特徴
PCとは「Precast Concrete」の略で、その名の通り「プレ(Pre=あらかじめ)キャスト(Cast=型に流し込む)」、つまり、あらかじめ工場で作られたコンクリート部材のことを指します。
現場で型枠を組んでコンクリートを流し込む「現場打ちコンクリート」とは対照的に、PCは品質管理の行き届いた工場で、壁、床、柱、梁といった建物のパーツを製造します。そして、それらのパーツを現場に運び込み、クレーンなどで組み立てて建物を完成させます。
最大の特徴は、工場生産による高い品質の安定性と、現場作業の削減による工期の短縮です。天候に左右されずに高品質な部材を計画的に生産できるため、効率的な家づくりを可能にします。
PC(プレキャストコンクリート)のメリットとデメリット
メリット
- 工期が短い:現場では組み立てる作業が中心となるため、型枠の設置やコンクリートの養生期間が不要になり、現場打ちに比べて工期を大幅に短縮できます。
- 品質が安定している:屋内の工場で、厳密な管理のもと製造されるため、天候や現場の職人の技術に左右されず、常に安定した強度と精度の部材を確保できます。
- 現場作業の省力化:現場での複雑な作業が減るため、作業員の安全性が向上し、人手不足の解消にも繋がります。
- 美しい仕上がり:工場で使う鋼製の型枠は表面が滑らかなため、コンクリートの仕上がり面が非常にきれいになります。
デメリット
- 輸送の制約とコスト:工場で作った大きな部材を現場まで運ぶための輸送費がかかります。また、現場までの道路が狭いと、部材を搬入できない場合があります。
- 設計の自由度が低い場合がある:規格化された部材を用いることが多いため、現場打ちコンクリートのような特殊な形状や自由な曲線デザインに対応するのは苦手です。
- 接合部の処理が重要:部材と部材のつなぎ目である「ジョイント」の設計・施工が建物の性能を大きく左右します。この接合部の一体化や防水処理には、非常に高い技術が求められます。
- 初期コストが高い場合がある:規格品でないオーダーメイドのPC部材を作る場合などは、コストが高くなる傾向があります。
PC(プレキャストコンクリート)の用途
PCは、その生産性の高さから、住宅から土木まで幅広い分野で活用されています。
- PC工法の住宅・マンション:壁や床といった主要な構造部材をPCで組み立てる工法。特に、同じプランの建物を多数建設する場合にコストメリットが出やすいです。
- 外壁パネル(カーテンウォール):建物の骨格とは別に、外壁としてデザイン性の高いPCパネルを取り付けることがあります。
- 擁壁・側溝:宅地造成などで使われるL型擁壁や、道路の側溝(U字溝)など、規格化された土木製品の多くがPCで作られています。
- その他:マンションのバルコニーや階段、電柱、橋桁、トンネルの壁(セグメント)など、社会のインフラを支える様々な場所で活躍しています。