「注文住宅を建てたい」と思っている方にとって、避けて通れないのが「お金」の問題です。
その中でも特に気になるのが「坪単価」。
最近では「新築の価格が上がっている!」という声を耳にすることも多いと思います。実際にどれくらいの費用がかかるのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか?

今は建て時なのか?



待つべきなの?
実は、注文住宅の坪単価はこの10年で1.5倍上昇しています。
この記事では、ハウスメーカーの坪単価がどのように推移しているか、なぜ価格が高騰しているのか、そしてこれから家を建てる上で何を意識すればよいのかを徹底的に解説していきます。
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ハウスメーカーの坪単価推移 – 10年間で1.5倍の値上げ
住宅の価格動向を知るうえで、まず押さえておきたいのが「坪単価の推移」です。
今回紹介するのは次のハウスメーカーです。
- 旭化成ホームズ
- 三井ホーム
- ダイワハウス
- 住友林業
- 積水ハウス
- パナソニックホームズ
- セキスイハイム
- ミサワホーム
- ヤマダホームズ(2021年以降のみ)
過去10年の全国平均の坪単価推移と背景
ここ10年間、日本の住宅価格は急激な上昇傾向にあります。2013年ごろまでは主要ハウスメーカーの坪単価は70万円〜85万円程度でした。
しかし、2024年時点では140万円〜105万円前後と、1.5倍以上に上がっているケースも珍しくありません。





きれいな右肩上がり…!
この上昇には以下のような背景があります。
- 震災復興や自然災害の増加:資材需要が増えたことで建築費が上昇
- デザイン住宅や高性能住宅の需要増:省エネ性やデザイン性に優れた住宅が増え、施工コストが上昇
- 人手不足:3K(きつい、汚い、危険)と言うイメージが強く、特に若手の職人が不足
住宅業界全体で性能重視・長期使用前提の建築が進んでいることも、坪単価の上昇に影響があります。
特に断熱性能や耐震性能を高めるための技術導入は、施工単価を高くする原因に直結します。
2020年以降の急激な坪単価上昇の”3つの要因”
ただでさえ上昇トレンドの坪単価ですが、2020年以降には特に急激な上昇をしています。これは新型コロナウイルスの影響を受けた時期で、これを境に住宅業界は大きく様変わりしました。
- ウッドショック:木材の価格が世界的に高騰し、供給も不安定に
- 物流の混乱:海上輸送の遅延やコスト上昇により輸入建材のコストが増加
- 円安の進行:輸入品が軒並み値上がりし、国内住宅価格にも波及
- リモートワーク普及による住宅需要増:郊外移住や在宅スペース確保のために住宅需要が急増
これらの要素が複合的に絡み合い、わずか数年で坪単価が20万円以上上昇しました。
主要ハウスメーカー別・坪単価の推移比較【一覧表付き】
代表的なハウスメーカーの坪単価の推移例(過去と現在)を示します。
ハウスメーカー | 2015年の坪単価 | 2024年の坪単価 |
---|---|---|
積水ハウス | 約84万円 | 約127万円 |
ヘーベルハウス | 約84万円 | 約138万円 |
住友林業 | 約89万円 | 約127万円 |
ミサワホーム | 約65万円 | 約80万円 |
セキスイハイム | 約68万円 | 約82万円 |
タマホーム | 約45万円 | 約68万円 |
※概算値:地域・プランにより変動あり
なぜ今、坪単価が高騰しているのか?その理由と背景
ここ数年で坪単価が大きく上昇している理由は、ひとつの要因ではなく、世界規模で起きている経済・社会的な変化に起因しています。
建築資材価格の高騰と世界的な供給不足
まず最も大きな要因として挙げられるのが、建築資材価格の高騰です。これは、いわゆる「ウッドショック」と呼ばれる現象として社会問題化しました。
以下の資材が特に価格上昇の影響を受けています。
- 木材(構造材・合板)
- 鉄鋼製品(鉄筋・鋼板など)
- コンクリートやセメント類
- 住宅用断熱材や内装材
- 新型コロナによるサプライチェーンの分断
- 世界的な住宅需要の増加(特にアメリカや中国)
- 物流コストの上昇(コンテナ不足・海上運賃高騰)
- 異常気象による自然災害での原材料不足
これらの原因によって、資材価格が高騰しています。加えて、日本では木材の多くを海外からの輸入に依存しているため、為替の影響も非常に大きいです。資材価格が上がれば当然、住宅価格や坪単価にも跳ね返ります。
この資材価格の高騰は一時的ではなく、今後も継続する可能性が高いとされています。理由は脱炭素化の流れにより「サステナブルな資材」への移行が進むことで、原価そのものが高くなりやすいためです。
人件費の上昇と人手不足による影響
次に重要なポイントは「人件費の上昇」です。住宅建築は非常に多くの職人や専門作業員の力で成り立っていますが、現在この業界では深刻な人手不足が続いています。
- 若年層の建設業離れ
- 高齢化の進行
- 技能実習制度の見直し
結果として、施工期間の長期化・人工(にんく)の単価上昇が起き、坪単価にも影響しています。
円安・インフレが住宅価格に与えるインパクト
もう一つの大きな背景に「円安」と「物価の上昇(インフレ)」があります。
2020年代に入り、日本円は米ドルやユーロに対して急速に下落しました。例えば、2021年には1ドル=110円前後だった為替相場が、2024年には150円を超える局面も見られました。
また、国内においても電気代・ガソリン代・物流費・人件費が上がっており、これらも住宅価格に間接的な影響を及ぼしています。
いわば住宅は「あらゆるコストの集合体」であり、社会全体のインフレと無関係ではいられないのです。
坪単価の上昇は、円安やインフレといった経済全体の動きとも密接に関わっており、今後もしばらくは価格が落ち着く見込みは薄いと言われています。
ハウスメーカーの坪単価比較の注意点 – 基本的な考え方と用語解説
坪単価を比較する際、「数字だけを見て判断する」のは非常に危険です。そもそも坪単価とは何か、どうやって計算されているのか、メーカーによってどう違うのかといった基礎知識を解説します。
そもそも「坪単価」とは何か?
「坪単価」とは、家を建てる際の1坪(≒約3.3㎡)あたりの建築費用のことです。
よく広告や比較サイトで「坪単価〇〇万円」と記載されていますが、その金額は次式で算出されます。
『建物本体価格 ÷ 延べ床面積(坪数)』
- 土地代は含まれない
- 外構工事(庭・駐車場など)も含まれない
- 諸経費やオプションは別料金であることが多い



坪単価だけを鵜呑みにすると、「思ったより高かった…」というケースも…
注文住宅における坪単価の算出方法
注文住宅の場合、各社が独自の計算方法で坪単価を出しているケースが多く、以下のような違いが出ます。
- 本体価格に何が含まれているか
- どの部分の面積を「延べ床面積」としているか
- 標準仕様かグレードアップ仕様か
たとえば同じ建物でも、設備の仕様(キッチン・お風呂・断熱材)をグレードアップすればその分坪単価は上がります。また、吹き抜けやスキップフロアを採用すると、同じ床面積でも家が大きくなるのでお金がかかり、坪単価は高くなりがちです。
つまり、「安く見せる」ことも「高く見せる」こともできてしまうのが坪単価という指標なのです。
ハウスメーカーごとの坪単価に差が出る理由
同じような広さ・構造でも、ハウスメーカーごとに坪単価が大きく異なる理由は以下の通りです。
- 構造(鉄骨 or 木造)
- 断熱性能・耐震性能などの標準仕様
- 設計自由度の違い(規格型 or フルオーダー)
- ブランド力やアフターサービスの充実度
特に高性能住宅を売りにしているメーカーでは、断熱材や窓、換気システムなどにコストをかけているため、坪単価は高くなります。
一方で、ローコスト住宅を得意とするメーカーでは、ある程度の規格化・大量仕入れによりコストを下げています。つまり、価格の差には「理由と価値」があります。
今後の坪単価の見通しと家づくりの最適なタイミング
ここまでで坪単価が過去10年で上昇してきた背景を見てきました。



でも、これからはどうなるの?
このセクションでは、2025年以降の坪単価の見通しと、家を建てるベストなタイミングについて解説します。
2025年以降の住宅価格予測:さらに値上がりする?
2025年以降の住宅価格、そして坪単価については、多くの住宅業界専門家が「今後も高止まり、もしくは上昇する傾向」を予測しています。その理由は以下の通りです。
- 1. 建築資材の価格高騰が継続している
-
ウッドショック以降、一時的に価格が落ち着いた資材もありますが、全体としては下がり切っていません。特に断熱材や構造材などは環境規制の影響もあり、今後も価格が維持・上昇すると言われています。
- 2. 為替(円安)傾向の長期化
-
輸入建材に大きく依存する日本の住宅業界では、円安が続く限り、坪単価を大きく引き下げることは難しい状況です。
- 3. 建設業界の人手不足が改善していない
-
職人不足はますます深刻化しています。新規の労働力が入ってこない限り、人件費の上昇は避けられず、工事単価にも影響を及ぼします。
- 4. 住宅の高性能化が進行
-
国が推進する「ZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」や「長期優良住宅」など、環境配慮型住宅の標準化により、建物自体の基本性能が底上げされており、それに伴って坪単価も上がっていく傾向です。
結果として、2025年以降も急激に価格が下がる可能性は極めて低く、「建てどき」を見極めるのがますます難しくなっているのが実情です。
「今建てるべきか」それとも「待つべきか」の判断基準
「価格が上がっているなら、待った方がいいのでは?」と考える方も多いですが、実は待つことによるリスクも無視できません。



今建てるべきか
それとも待つべきか
- ▶︎ 建てたほうがいい人(今すぐ)
-
- 家賃を払い続けるのがもったいないと感じる
- 子育てやライフスタイルの変化で広い住まいが必要
- 金利が上がる前に住宅ローンを組みたい
- 建築や土地の目処がすでに立っている
このような方は、多少価格が高くても長期的には得をする可能性が高いです。特に今は低金利が維持されており、ローン負担を抑えられるメリットがあります。
- ▶ 待ったほうがいい人
-
- 家づくりの知識がまだ浅く、プランが固まっていない
- 転勤やライフイベントの予定が不明確
- 土地が見つかっていない、エリア選定が難航している
- 省エネ性能や新制度の動向を見極めたい
このような方は、焦って建てて後悔するより、慎重に計画を進めることが大切です。価格だけでなく、「どんな家にしたいか」を具体化できるかどうかが、建築のタイミングを決める鍵になります。
価格上昇の中でも後悔しない家の建て方とは
「価格が高い時期に建てたら損なのでは…?」という不安は誰しも感じるものです。しかし、以下のような戦略を取ることで、坪単価が高くても後悔のない家づくりが可能になります。
- 1. 「総額」で判断する
-
坪単価だけにとらわれず、「土地+建物+諸費用+ローン」の総予算で比較検討することが重要です。坪単価が安くても、諸経費がかさむ場合は逆に割高になることもあります。
- 2. 性能を重視して長期的に得をする
-
高性能住宅(断熱・気密・太陽光発電など)は初期費用は高めですが、ランニングコストが安く、長期的には大きく得をする可能性があります。
- 3. 建築条件付き土地や規格住宅も選択肢に
-
オーダーメイド住宅ではなく、「間取りや仕様がある程度決まっている住宅」はコストを抑えやすいです。フルオーダーにこだわらない場合は、検討の価値があります。
- 4. 複数のハウスメーカーから見積もりを取る
-
必ず3社以上から見積もりを取り、価格・仕様・保証のバランスを比較しましょう。価格交渉もしやすくなり、結果的により良い条件で家づくりができます。
『タウンライフ』のサービスでは、一度に複数のハウスメーカーにプラン提出してもらい、比較することができます。
まとめ|注文住宅の坪単価上昇のトレンドは止まらない!
ハウスメーカーの坪単価は、過去10年で確実に上昇しており、今後もこの流れは続くと見られています。
ただし、価格が上がったからといってすぐに「損だ」と考える必要はありません。
家は一生に一度の大きな買い物。
だからこそ、「今の価格で、どう納得のいく家を建てるか」という視点が大切です。
よくある質問(FAQ)
注文住宅の坪単価はいくら上がりましたか?
当サイトで調査したハウスメーカー8社の坪単価平均価格は、2015年は約83万円でした。一方で2024年には120万円と約1.5倍の上昇率です。
注文住宅が高くなる原因は何ですか?
注文住宅が高くなる主な原因は、以下の3つで、いずれも今後しばらく続く可能性が高いです。
- 資材価格の高騰(ウッドショック、世界的な供給不足、物流コスト上昇、為替の影響)
- 人件費の上昇(職人不足や高齢化、施工期間の長期化)
- 円安とインフレ(燃料費・電気代・物流費などの上昇が住宅価格に波及)
効率のいいハウスメーカーの情報収集方法は?
ネットで情報を一括収集するのがおすすめです。
- 公式サイト:施工事例、構造・性能の説明、保証制度を確認
- 比較・カタログ収集サイト:坪単価や特徴を一覧で比較(LIFULL HOME’S、SUUMOなど)
- 口コミサイト・SNS:実際の施主の体験談や不満点をチェック(価格・対応・施工品質)